銀行融資の成功率を上げる決算書の作り方|会計事務所が明かす「銀行目線」の5つのポイント

この記事のポイント
- 節税のために利益を圧縮しすぎると、銀行審査で致命的なマイナス評価を受ける。
- 銀行が融資審査で最も警戒するのは「役員貸付金」「連続赤字」「不透明な勘定科目」の3つだ。
- 融資に強い決算書は、決算の2〜3か月前から税理士と方針を擦り合わせることで設計できる。
- 減価償却のコントロール・役員勘定の整理・棚卸資産の見直しが、合法的に決算書を整える三本柱だ。
- 会計事務所の役割は税務署対応だけではない。会社の成長に向けて「会社の側に立つ」支援が本質だ。
関連事例をお読みになりたい方へ freeeとPOSシステムの連携に苦労しながら新店舗開局に向けた融資を成功させた、神奈川県の調剤薬局の事例をご紹介しています。
「節税を頑張ったら、融資を断られた」——なぜそうなるのか
税理士に勧められるがまま節税をしっかりやったのに、銀行の審査で「決算書の内容に不安がある」と言われてしまった。そんな相談が、中規模企業の経営者から後を絶ちません。
なぜこのようなことが起きるのか。答えはシンプルです。
税務署を意識した決算書と、銀行が好む決算書は、方向性が真逆だからです。
税務署に対しては、課税所得を圧縮して納税額を減らすことが合理的な行動になります。一方、銀行は決算書を通じて「この会社は本当に返済できるか」を審査します。利益が出ていて、キャッシュが回っていて、財務内容が健全な会社に対してのみ、銀行はお金を貸します。
つまり、税務署の目線で「正しく節税した」決算書は、銀行の目線では「融資してはいけない会社」に見えてしまうことがあるのです。
この記事では、融資審査を担当する銀行員がどこを見ているかを解説したうえで、決算前に仕込んでおくべき会計処理の工夫と、顧問税理士に求めるべき姿勢を具体的にお伝えします。
銀行が「一発でノー」を突きつける決算書の3大NGパターン

銀行が融資審査でまず確認するのは、直近3期分の決算書です。顧問先の99%以上がクラウド会計を活用するMC LINK会計事務所の経験では、融資が難しくなるケースには明確なパターンがあります。
NGパターン①:行き過ぎた節税による「連続赤字」または「債務超過」
節税の手段として最もよく使われるのが、利益を圧縮する各種施策です。役員報酬の引き上げ、経費の前払い、各種共済への加入など、どれも正当な節税手法ではあります。しかし、これらを組み合わせて過剰に実施してしまうと、2期・3期と連続して赤字になることがあります。
銀行は「連続赤字=事業の実力がない」と判断するわけではありませんが、「節税の結果」であることを証明するには、相当な説明と資料が必要になります。また、赤字が続くと純資産が削られ、最終的に「債務超過(負債が資産を上回る状態)」に陥ると、ほぼすべての金融機関で新規融資が困難になります。
「税金を払うのはもったいない」という発想は理解できます。しかし、成長のための融資を受けたいなら、一定の利益を残した決算書を設計することが欠かせません。節税と融資対策のバランスを、毎期の決算前に税理士と議論できているかどうか。ここが、成長する企業とそうでない企業の分岐点のひとつです。
NGパターン②:資産の部に居座り続ける「役員貸付金」
役員貸付金とは、会社が代表者や役員に対してお金を貸し付けている状態を指します。
バランスシート(貸借対照表)の資産の部に計上されますが、
銀行はこれを「最も警戒する項目のひとつ」として見ています。
銀行の視点から見ると、役員貸付金の存在は「会社と社長のお金の区別が曖昧」というシグナルに映ります。
融資したお金が社長個人の口座に流れてしまうリスクがある、と判断されるのです。
役員貸付金の金額が大きいほど、あるいは年々増えている場合は、審査担当者が必ずその内訳を確認しに来ます。
逆のパターン、つまり「役員借入金(社長が会社にお金を貸している)」は、
銀行交渉の場では「実質的な自己資本」として評価してもらえる余地があります。
この違いを知っているかどうかで、融資審査の結果が変わることがあります。
NGパターン③:勘定科目の内訳が不透明で、経営の実態が掴めない
決算書は税理士が作るものですが、その中身の「説得力」は事務所によって大きく差があります。
特に、以下の項目で内訳が不明瞭な決算書は、銀行の審査担当者から「この会社の実態がわからない」と判断されます。
- 「その他」という勘定科目に大きな金額が入ったまま
- 売上の内訳(業種・顧客・地域別など)が全くわからない
- 多額の仮払金・未収金が長期間精算されていない
決算書の数字の正確さはもちろん重要ですが、「この数字がどこから来ているか」を説明できる内訳書と資料を整えておくことが、融資審査を通過するための実務的な条件です。
【匿名事例】新店舗開局の融資を成功させた「決算対策」の実際
理論だけでは伝わりにくい部分を、実際の支援事例で補足します。
神奈川県内で調剤薬局を経営しているA社様は、新店舗の開局日を約半年後に控えた時点で、
MC LINK会計事務所にご相談をいただきました。
経営状況は堅調でしたが、新店舗の内装工事費・医薬品の初期在庫・採用費などをまとめて調達するには、相応の融資が必要な局面でした。
この案件でMC LINKが取り組んだのは、融資申請の「準備」ではなく、「決算書そのものの設計」でした。
具体的には、翌期の決算方針をあらかじめ融資目線で検討し、会計ルールに則った範囲内で減価償却の処理方法や、
繰延資産の償却方法、費用の計上区分などを見直すことで銀行が見たときに「返済能力がある」と判断しやすい形に整えました。
さらに、クラウド会計(freee)とPOSシステムの連携という技術的な課題も並行して解決しました。
入金・在庫・売上のデータが自動で会計ソフトに反映される体制を整えることで、
リアルタイムの財務数値を銀行への説明資料として使えるようにしたのです。
結果として、A社様は目標額の資金調達に成功し、予定通り新店舗を開局されました。
経営者の方からは「MC LINK会計事務所にお願いしていたおかげで、無事に資金調達ができました」というお言葉をいただきました。
「ありがとう、すいません」と言えばなんとかしてくれると弊社への信頼を言葉にしてくださっています。
この事例で重要なのは、融資が決まった後から動いたのではなく、「融資を前提に決算書を設計した」という順序です。
決算後に融資申請の相談を持ち込んでも、すでに確定している数字を変えることはできません。
同じような状況(多店舗展開・新規融資)の方の事例を見る →
融資を有利にするために、決算前に「仕込んでおくべき」会計処理の工夫

ここからは、経験5年以上×2名体制でクライアントの決算を担当するMC LINK会計事務所が、実際に活用している会計処理の工夫を解説します。
工夫①:減価償却の方法を見直し、利益の着地点をコントロールする
法人が機械・設備・車両などの固定資産を購入した場合、税務上は毎期一定額を減価償却費として費用計上することが原則とされています。一方、固定資産を少額減価償却資産や一括償却資産として処理することで早期に費用計上することができます。
つまり、利益が少なくしたい年度は償却を多めにするために少額減価償却資産や一括償却資産として処理し費用を増やし、融資を申請したい年度は償却を少なめにするために減価償却資産として処理して利益を多く残す、という調整が合法的に可能です。
「節税の年」と「融資の年」を意識してローテーションを設計する。これが、成長企業の財務戦略のひとつです。
工夫②:役員借入金を「実質的な自己資本」として銀行に説明できる状態にする
前述のとおり、役員貸付金(会社→役員)はマイナス評価の対象になりますが、役員借入金(役員→会社)はプラスに評価してもらえる可能性があります。
銀行の審査では、役員借入金について「実質的には社長が自社に出資しているお金であり、返済順位が低い(社長は会社が存続する限り返済を求めない)」という説明が通れば、自己資本に近い性質として認定してもらえることがあります。
この際に必要なのは、借入金の内訳書と、「社長が会社への返済要求をしない」旨の確認書類です。これを用意できるかどうかは、顧問税理士がそのような視点で動いているかどうかにかかっています。
工夫③:9カ月の会計数値ができたタイミングで着地見込を算定する
売上の計上のタイミングは商品の納品やサービス提供の完了のタイミングです。
ですので、資金調達を予定しており好決算で着地したい場合は、決算日までに多くの納品、サービス提供を完了しておく必要があります。
また、費用の場合は発生したタイミングで計上するため、好決算で着地したい場合は、消耗品や広告費は翌期にまわすことが好ましいです。
ここで重要なことは、決算の前、9カ月の会計数値が出来上がったタイミングで、1年間の業績の着地の見込を算定することです。決算着地見込が分かれば、納品、サービス提供を急ぐ必要性の判断もつきます。
MC LINK会計事務所では、すべての税務顧問のお客様に対し、第3四半期のタイミングで決算着地予定額、納税予定額の算定を行っております。これに基づき残り2~3か月の決算までお客様がとるべきアクションを一緒に協議しています。
工夫④:資金繰り表と事業計画で将来の返済能力を説明する
決算書は過去の数字です。銀行が本当に知りたいのは、「これから先、きちんと返済できるか」という未来の見通しです。そのため、融資申請の際は決算書だけでなく、資金繰り表(向こう12か月の収支予測)と事業計画書を合わせて提出することが、審査通過率を上げる実務的な方法です。
資金繰りや事業計画書を作成していない会社は、現在の受注残高が分かる資料や、直近で取れた案件の大型の契約書などで補完することも選択肢です。
MC LINK会計事務所では、銀行同行の際に資金繰り表の説明を担当者が代わりに行うケースも多くあります。経営者が伝えにくい数字の背景や、事業の見通しを「会社の言葉」で説明するサポートを、顧問契約の中に含めています。
融資対策で税理士に求めるべき「たった1つの姿勢」

ここまで様々な手法を解説してきましたが、結局のところ最も重要なのは、顧問税理士がどのスタンスで動いているか、です。
「税務署に怒られない申告書を作る」ことを目的とした税理士と、「会社が次の成長ステージへ進むために、今どの選択がベストか」を一緒に考える税理士とでは、決算書の仕上がりがまったく違います。
断言します。税理士の仕事は、税務署を満足させることではありません。会社の側に立って、会社が成長するために法律の枠内で最大限何ができるかを追求することです。
融資を前提とした決算設計、資金繰り表の作成指導、調達先の銀行紹介。これらは「別途費用」が発生する特別なオプションではなく、外部CFOとして経営に入ることが当たり前のMC LINK会計事務所では、顧問契約の中で対応しています。
「今の税理士は決算が終わったら1年間ほぼ連絡が来ない」「融資の話をしたら別の専門家を紹介された」という状況が続いているなら、一度、税理士との関係性を見直してみることをお勧めします。
まとめ:融資に強い決算書は、「銀行目線」と「会社目線」を両立した設計から生まれる
融資を成功させるための決算書作りを、改めて整理します。
第一に、節税と融資対策のバランスを毎期の決算前に明確に決める。利益を残す年度と節税を厚くする年度を計画的に設計することが、長期的な財務戦略の基本です。
第二に、役員貸付金・連続赤字・不透明な勘定科目という銀行が嫌うNG項目を日頃から排除しておく。
これは一時的な対処ではなく、毎期の経営習慣として組み込む必要があります。
第三に、決算書だけでなく資金繰り表と事業計画を揃え、「返済できる会社である」ことを数字で証明できる状態を維持する。
そして最も大切なのは、これらすべてを「融資が必要になってから急いで準備する」のではなく、常に銀行目線を意識した財務状態を維持しておくことです。
成長企業の経営者は、融資のタイミングを自分でコントロールしています。
それを可能にするのが、会社の側に立って動く顧問税理士の存在です。
よくある質問
Q. すでに赤字決算になってしまった場合、融資はもう受けられませんか?
赤字だからといって必ずしも融資を受けられないわけではありません。
赤字の原因が設備投資や一過性の経費によるものであることを、資金繰り表や事業計画で説明できれば、融資が通るケースは多くあります。
重要なのは「なぜ赤字なのか」を数字で証明できる状態を整えることです。
Q. 決算のどれくらい前から税理士に相談すれば、融資対策は間に合いますか?
遅くとも決算の2〜3か月前には相談が必要です。
期末を過ぎると動かせる勘定科目が限られます。
MC LINK会計事務所では、節税検討シートを使って決算前に役員報酬・減価償却・棚卸資産などの方針を網羅的に確認し、融資目線での着地点を一緒に設計しています。
Q. クラウド会計(freeeなど)を使っていると、銀行の評価は上がりますか?
データの整合性や更新頻度が高まる点は銀行からも好意的に見られますがツール自体が評価を上げるわけではありません。
重要なのは、クラウド会計で可視化された数字の中身を、税理士が銀行目線で設計・管理しているかどうかです。
freee 5つ星認定アドバイザーとして、MC LINK会計事務所ではデータの整備から説明資料の作成まで一気通貫で対応しています。
Q. 銀行同行もお願いできますか?
はい、対応しています。融資申請の場で、経営者が伝えにくい財務状況の背景や事業の見通しを代わりに説明するサポートを、顧問契約の範囲内で行っています。
「銀行との交渉が苦手」「何を準備すればいいかわからない」という方は、まず無料相談からお声がけください。
自社の融資対策を相談したい方へ 30分の無料相談を受け付けています。決算前の方針整理から、融資申請の準備、銀行同行まで、MC LINK会計事務所が会社の側に立って伴走します。→
監修:MC LINK会計事務所 代表パートナー 丸山 悠由(公認会計士・税理士)
公開:2026年6月
最終更新:2026年6月
本記事の情報は2026年6月時点のものです。
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